猫を飼っている小説家は多く
現代作家でいえば
村上春樹や角田光代
町田康などが猫好きで有名ですね。
見た目の可愛さは勿論ですが
しなやかな身のこなしや
吸い込まれそうなほど美しい瞳は
猫にしかない魅力です。
そのミステリアスな雰囲気が
創作意欲を刺激するのかもしれません。
今回はいつもと少しテイストを変えて
3人の作家と猫にまつわるエピソードを
ご紹介したいと思います。
あの著作家の意外な一面を知ると
作品を読んでみたくなるかも。
■向田邦子と猫
参照元 http://shinschan7.exblog.jp/tags/%E5%90%91%E7%94%B0%E9%82%A6%E5%AD%90/
数々のヒットドラマを手掛けた
脚本家にして直木賞作家の向田邦子。
当初は実家から連れて来た
シャム猫の「伽俚伽(かりか)」
という名のメス猫だけを飼っていました。
その後旅先のタイで
コラットという品種に一目ぼれした彼女は
オスの「マミオ」とメスの「チッキイ」を
迎え入れたのでした。
コラットって
あまり耳馴染みのない種類ですが
ロシアンブルーを少し濃くしたような
ブルーグレイの被毛が美しい猫です。
彼ら3匹のために専用部屋をつくり
3時間かけて大鍋で魚を炊いたり
コラット夫婦の間に生まれた未熟児を
1週間寝ずに育てたり。
どんなに忙しくても
猫にかける手間だけは惜しまず
甲斐甲斐しく面倒をみていたようです。
彼女は猫のことを
【甘えあって暮らしながら、油断は出来ない、その兼ねあいが面白い】
と綴っています。
単に愛らしいだけでなく
突然思い出したように獣になる。
猫のそんな自由奔放さが
彼女を魅了したのでしょう。
■内田百閒と猫
参照元 http://green.ap.teacup.com/wbsjkyoto/215.html
夏目漱石の門下生であり
鉄道マニアの先駆けとしても知られる内田百閒。
謹厳実直で有名な人でしたが
そんな彼を狂わせるほど夢中にさせたのが
家に迷い込んできた1匹の猫でした。
百聞はその猫を「ノラ」と名付け
子供のように可愛がりましたが
ある日姿を消してしまいます。
百聞は当時70歳を越える高齢。
捜索できる体力はありません。
ノラを探すため
チラシや新聞広告を出し
ラジオ放送まで流しましたが
戻ってくることはありませんでした。
いつも無愛想な百聞が
なりふり構わず取り乱す様は
「先生は気が狂ったのか」と
弟子が驚くほどだったとか。
ノラと
その後現れるノラそっくりの「クルツ」との
エピソードが描かれている『ノラや』は
原稿を見返すのが辛いからといって
推敲や校正を全くしなかったそうです。
痛々しいペットロスの悲しみが
表立って注目される作品ですが
猫への深く温かい愛情も
感じさせてくれる内容になっています。
■大佛次郎と猫
参照元 http://cat-press.com/cat-news/book-osaragijiro-and-catsl
『鞍馬天狗』や『赤穂浪士』の
著者として名高い大佛次郎もまた
無類の猫好きでした。
生涯のうち世話をした猫は500匹以上で
家には常に10匹以上いたそうです。
猫を題材にした作品も多く
登場人物も猫好きに設定しまうほど。
「大佛次郎」と検索したときに
出てくる画像の殆どが
猫と一緒に写っているものばかりなのも
彼の猫への愛情を物語っているかのようです。
彼は亡くなる前に「飼い猫は5匹まで」
と遺言に残したそうですが
夫人も負けず劣らずの猫好き。
その遺言が守られることはなく
大佛の死後もたくさんの猫と生活を共にし
夫人亡き後は猫好きのお手伝いさんが
世話をしていたようです。
猫を飼っている人であれば
『猫のいる日々』がお勧めです。
「生活になくてはならない優しい伴侶」
と語るほど猫を愛していた大佛を
身近な存在に感じられるかもしれません。
■猫と作家は似た者同士
今回は作家と猫の逸話について
触れてみましたが
猫を通じて作家の人間性も
垣間見ることができそうです。
今回挙げた3人以外にも
猫は多くの作家から愛されてきました。
群れずに単独で過ごすスタイルを
自分と重ねる人も多いのでしょう。
在宅で仕事をする彼らにとって
いつも側にてくれる猫は
生活の中にある癒しだったのかもしれません。